アスラが
....盗賊であるアスラが、捕まった。
それは、つまり───
アスラの死が近いことを示す。
この国で、この蒼の王様が納める国で
捕まった盗賊が歩む道は....死しかないからだ。
「....ジルじいちゃん。
アスラ、大丈夫だよね?」
子供たちが、ジルの顔を心配そうに覗き込む。
いつの間にか、険しい顔になってしまっていたらしいことに
ハッと気が付いて、ジルは張っていた顔の筋肉を緩める。
(───いかん。子供たちに不安を与えては。
何も....悟らせては)
そう。
子供たちは、何も知らない。
今までアスラとジルで必死に隠してきた
アスラが盗賊である真実。
汚れを知らない子供たちが、この真実を知るにはまだ早い。
いや、ずっと知らなくていい。
知ってしまえば
子供たちはもう、心から笑えなくなる。
それは、駄目だ。
駄目なんだ。
───だからこそ
今、ここで子供たちに事を悟らせてはならない。
それが、アスラの想いでもあったから。
「───大丈夫だ。心配はない。
....大丈夫だ」
大丈夫。
ジルはその言葉を、子供たちに
そして最後にもう一度、自分に言い聞かせるように呟いた。