自分自身も不思議になるくらい、変な感じだった。



....悪など憎いはずなのに、この牢の中の彼女を前にした時から憎しみが何かに中和されているようで心が蒼の王様と呼ばれる彼からいつもの普段のシュリへと戻っていく。








(何なんだ、この女は)



彼女の鮮やかすぎる紅色の瞳が、眼に焼き付いて離れない。


彼女の綺麗な紅色の瞳は、まるで煌めく宝石のようで、シュリは思わず手を伸ばしたくなった。
手に入れたくなった。

唐突に、そんな衝動に駆られた。








(────.....)





「───フンッ。なかなか面白い奴だな。
......お前、名は何という?」




シュリは暫く沈黙し、そして結局留まり切らなくなった彼女への興味に思わず言葉が零れた。

さっきまで、彼女を嘲けて絶望の淵に落としてやる。
ただそれだけで此処にやってきていたのだが、状況が変わった。




どうしても、この牢の中の彼女への興味が抑え切れなくなった。





「.....」



そしてその唐突なシュリの言葉、牢の中の彼女は
一瞬たじろぎ、また暫く沈黙が二人の間を走った。






「───アスラだ」



そして、その沈黙を抜け
牢の中の彼女....アスラが、躊躇いがちに口を開いた。


警戒こそ怠らないが、今の状況で黙っていても仕方ないと思ったのだろう。

アスラと名乗った彼女は、フッと肩の力を抜きシュリを改めて見る。





「アスラか。
私の....いや、俺の名はシュリ」