「───はい、おそらくその者だと存じます」




レストは、興奮に少し声を張り上げるシュリに対して
至って冷静に答える。




この男は、常に冷静だ。

時々、何を考えているのか分からなくなることがある程に。


普段からあまり笑わないし、騒いだりしている所なんて見たことない。




いつもそんな彼を見て、シュリは心の奥で
自分に心を開いていないのだと思い、少しだけ寂しくなるのだった。







「今、その者を地下の牢へと連行した所でございます。

────いかがなさいますか?シュリ様」





「....盗賊は罪人だ。生かしておくわけにはいかない。

────だが、少し興味がある。殺してしまう前に、その面を拝んでやる」





「.....かしこまりました」





悪を前にした時。
王から人の暖かさが消える。


そう兵たちが噂をしていた。






───どうやらその噂は、間違ってはいないらしい。

今のシュリの瞳には、冷酷な蒼い光しか見出だせなかった。