この城が自分を守ってくれる。
此処に居れば、もうあんな哀しいことなんて....見なくてもいい。
いつかこの手で
この国を、本当に平和で悪なんて....哀しみなんてない世界に出来た時
そしたらその時
この城を出よう────。
「────....」
単に、外にあるはずの恐怖から逃げているだけかもしれない。
だけど今のシュリは、こんな想いでただ必死に
王として生きていた。
─────トントンッ。
そんな想いに駆られるシュリ。
その彼だけの空間に、唐突なノック音が響いた。
「───失礼致します.....シュリ様」
シュリが音の根源である扉を振り向くと
ゆっくりと開かれた扉の先に、一人の男が立っていた。
その男は、膝を付き深々と礼をすると
立ち上がり、顔を上げた。
灰色の髪を右側だけ長く伸ばし
翡翠色の瞳を持つ男。顔はかなり整っていて、誰もが思わず振り返ってしまうほど。
だが男は隻眼らしく、片方の眼には眼帯が巻かれていて
翡翠色の綺麗な瞳は、片方した見えなかった。
シュリは唐突に入ってきたその男の姿を見て
少しだけ安堵したように、口を開いた。
「何だ....お前か。誰かと思ったぞ、レスト」
シュリはそう言うと、レストと呼んだその男の元へと歩み寄る。