シュリはその蒼い瞳を大きく見開いた。






「あの処刑台からの紅の盗賊の逃亡。
あの民衆と警備の中でそれを手助けした存在、それが気になりまして他の者逹とは別に調べておりました」



シュリの反応をフッと一瞥し、レストが続ける。





「やはりあの者の後ろには大きな組織の影が。
この国は愚か世界中にその組織下の盗賊逹が居て悪事を働いているとの情報を掴みました。

我等が垣間見たはその氷山の一角。
紅の盗賊はその盗賊団を束ねる中心の一人であるかと思われます」



「世界中.....そんな大きな盗賊団を、あの娘が?」



「左様。
今までは他国を中心に活動をしていた様で御座いますが、近頃は我が国の近辺でもその勢力を広げてきた様で御座います。

シュリ様の素晴らしいお働きによってこの国の殆どの住人は平穏に暮らすことが出来ておりますが、ごく一部国家の目を掻い潜った輩がこの国の中で悪事を働き民を苦しめているようなのです。
その輩は皆、紅の盗賊のその仲間。その盗賊団に属して居る者で御座います」



「っ!」




淡々と言葉を連ねるレスト。
その言葉が語る内容にシュリは絶句し言葉を失う。

あのアスラという盗賊の正体が、まさかそんな悪の世界の中心の人間であったなんて。
本当の悪には見えなかった。
そう確かに感じて消せなかった彼女への感情がレストの言葉によって崩されていく。







「その盗賊団を率いるは悪蔓延る裏の世界では名を轟かせている一人の男。
その男はかつてとある一国を陥れ滅亡へと導いたとされる極悪非道の冷血な男と聞きます。

盗みは愚か欲望の為ならば殺しも厭わない。
紅の盗賊の後ろに在るはそんな男が率いる極悪非道で史上最悪の盗賊団.......」



言葉が次々と重ねられる。

史上最悪の盗賊団。
その言葉にシュリの蒼く美しい瞳がフッと陰る。
彼の心に潜む闇が顔を見せる。






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