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「........申し上げます。
今日も国中を隈無く捜索致しましたが、逃亡した紅の盗賊の消息は未だ掴めておりません」



歴史に名を残す大騒動。
国中に衝撃をもたらしたとある一人の盗賊の逃亡劇。

あれから幾月。
余韻が大いに残るその国のその余韻の中心。
静まり返る王宮のその一室で聞こえるのはここ数日間で何度か目も判らない報告。





「そうか.....ご苦労だった。
明日も引き続きよろしく頼む」



「はっ!
シュリ様、明日こそは必ずや!」



「.......。
もう下がっていい」




待望の報告は無い。
シュリは心の中で大いに落胆するが、顔には出さずに報告へと訪れた兵を返す。


ギィイッ。ガチャンッ。

兵は深々と一礼をして部屋を去る。
部屋の中には影は一つ、この部屋の主のものだけである。












「紅の盗賊........一体何処に居る」



一人呟く声は虚しく漂い消える。

銀色の流れるような長い髪。
シュリはそんな髪を静かに揺らしてひと月前のあの日を想う。



燃え盛るような紅の瞳と深紅の髪。
鋭い眼光。真っ直ぐな視線。

そう。
彼女の姿が頭から離れない。
あの、紅の盗賊の姿が。





「確かアスラと言ったか」



暗く冷たい地下牢の鉄格子越しに初めて彼女を見た瞬間、今まで感じたことの無い衝撃を受けた。

両手足を縛られ拘束された彼女。
彼女は罪人として捕らえられた身で自分は彼女を捕らえた国家のトップ。王。


立場の優劣は明らかなはずだった。

........。
なのに感じさせられた劣等感。
彼女が見せた自分を哀れむあの瞳がどうしても胸の中で引っ掛かって離れない。






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