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走り回る兵の騒がしさ。
夜になっても尚、街中で語られ止まない昼間の衝撃。



そんな騒がしさも衝撃の波も届かぬ、静けさ。

逃れ辿り着いたその場所は、この世のものとは思えぬ程の穏やかな静寂が支配する。








月に映える、大きな影。

夜空に聳えるその影は、夜の深い闇をも飲み込んでしまうような深い哀しみの陰に包まれて、ゆらりと地面に黒い影を揺らす。





此処は、亡国。
行き場のない哀しみの記憶が、今も尚消されることのないまま彷徨う墓場。



かつて栄えたはずのこの場所に、その面影はない。

人で溢れていたはずの街並みはすっかり消え去り、今はもう国の中枢として支えたはずの古城がポツリと存在するだけだ。




ぼんやりと月明かりを纏い聳える城から感じるのは、夜の静寂か。
それとも、亡国の嘆きか。





そして主を失った亡国は己の廃れ行く末路を感じながら、夜の闇に紛れ訪れた客人をただ静寂の中に受け入れる。

干渉はしない。
ただ受け入れ、城は彼等を月明かりの元に見守っていた。