「......はっ!」



その声に兵達がぞろぞろと、今にも崩れそうな廃墟の中に入っていく。





その中にはアスラが居た形跡はあるものの、その行方の知れるような手掛かりはない。



こうなることを予想して、アスラの仲間であるクロア達が綺麗さっぱり処理していった。

さすがは盗賊。
こういうことに、ぬかりはない。





それに加えて、今までアスラが盗みジル達に与えたものは別の離れた場所へと移した。



ボロボロの何もない廃墟。
乏しい生活。痩せ細ったジルたちの姿。



彼等はただの被害者だ。

そう兵達に思わせるには、充分な材料だろう。












「.......報告しますっ!
廃墟の中を隈無く捜しましたが、紅の盗賊が居た形跡は幾つかあるものの行方や素性が分かるような手掛かりは無し。

中は至るところに傷があり、食糧や最低限の生活物資すら.....。
中に居た者は子供も含め十数人。皆痩せ細り、盗賊などいう仕事がこなせるような者は一人も居りません」




中へと捜索へ入った兵達が再び外へと出てきたのは、それからまだ数分しか経っていない頃だった。

兵に指示を出し一人、ジルの前で待っていたその兵達の上司らしき兵は、その早さに驚いているようだった。