〜1〜








「シュリ様。
我々の不手際にて、あのようなことに.....申し訳ありません」




「........それで、紅の盗賊の行方は?」




「はい。今、国中を隈無く捜しておりますが、まだ情報は―――。
で....ですが必ずや奴を捜し出してみせます。
暫しのご猶予を」





「そうか。
ご苦労だった.....引き続き捜索に当たれ。
もう戻っていい」





「はっ!」






――――ガチャンッ。





「......」




シンッとなる部屋。

そんな部屋の中。
いつもの椅子の上に腰を掛け、人知れず一人溜め息をつく蒼い影。






「奴は....見つからないか」



ぼそり。
呟く声が、開いた窓からそよぐ夜の冷たい空気にじんわり響く。

その声は冷たく、何処か戸惑いを帯びて空気に溶け込んだ。






「逃げただと?
.....あの処刑台から。この俺から」




冷たい空気が頬を撫でる。

その中で彼は―――シュリはほんの数時間前の出来事を思い出し、己自身に確かめるようにまた呟く。


信じられない。
でも事実である、その出来事を。







今から数時間前。

青空広がる炎天下の広場。まるで蟻の如く集まる兵士。



その真ん中で聳え立つ処刑台。
そしてその上から自分を睨み付ける鋭く、だが美しい紅。