アスラは深く溜め息をついた。
「さぁ―――これからどうしようか」
溜め息を付き、ポツリと呟く。
その声はいつもの強気で自信に溢れたものとは違い、弱々しく不安を帯びたものだった。
今日の正午。
アスラはこの国の蒼の王様―――あのシュリという男によって、処刑される。
国を揺るがす悪として。極悪な犯罪者として。
逃れられる見込みのない死の危機を目前に、強気で居られる訳がなかった。
「.......」
死の恐怖。それは目の前まできて初めて実感するものだ。
身を刺すように、時間が経つにつれてその恐怖が浸透していく。
「......大丈夫だ。何を恐れているんだ、私は。
大丈夫だ。きっと、助けに来てくれる」
伝わる恐怖に震える身体を、アスラは必死に落ち着かせる。
そして『大丈夫だ』と自分に言い聞かせるように、そう言った。
今の自分では、何も出来ない。逃げることも、戦うことも叶わない。
ただ一つの望みは、昨日の夜―――命知らずなあの馬鹿との約束。
「......バルト、信じている」
必ず助ける。
何の保障もないその言葉。
それはただの口で交わした約束だが、アスラにとっては何よりも信じれる言葉だった。