〜1〜





カンッカンカンッ―――。



走り行く背に、けたたましい鐘の音が鳴り響く。

穏やかだった城の中の空気が、一気に張り詰める。
激しく人が行き交い、慌ただしさが空気から伝わってくる。







「......あっぶねぇ」



非常事態に騒めく城内を、抜け出した城の外の木の陰に身を潜めて
バルトは、ふぅっと安堵の息をついた。


走ってきて乱れた息を木陰の元で整えて、身を潜めたままバルトはそっと様子を伺う。






「まだ何処かに居るかもしれない!捜せッ!」



足音と共に近付いて来る声。
その声に、バルトは身を隠す木陰に深々と身を隠す。




「.....此処も危ねぇな」




幸い、今バルトが居るのは城の中からの明かりが届かない暗がり。
身を隠す草陰なども多く、暫らくの間は見つかることはないはずだ。


だが、それも時間の問題。

時間が経てば、此処にも直に衛兵たちの捜索の手が及ぶ。






「さて....どうするかなぁ」



バルトは小声でそう呟くと、困ったように頭を掻いた。
困っているにしては暢気な顔をしているが、彼は元々こういう男。仕方がない。



でも、絶対に捕まる訳にはいかなかった。
アスラを助けるために彼女を暗い地下牢に置き去りにしてまで、此処まで逃げてきたのだ。



此処で捕まったら、面目が立たない。

捕まって自分まで牢にぶち込まれて、アスラも守れずに処刑されたりなんかしたら
そんなの笑い話にだってなりゃしない。