「…」


風が吹く。

時を進めるかのような強い風が。


私は最近切ったボブヘアの髪を揺らしヤマト先輩を見つめた。

そうだこの人は。

今日初めて会ってから、どことなく感じていた。


『懐かしい』と。


「久しぶり。」


「…。」


真っ白になる。


「カナちゃん」


「ッッ!!」



懐かしい呼び名に心が暴れる。


「ヤマちゃん…?ヤマちゃんなの??」


嘘でしょ。


ヤマちゃんは…。








.+*:゚+。.☆







私が小学生の時隣の家にいた男の子。
すごい泣き虫で弱々しくて、真っ白な肌で長いまつ毛。
女の子みたいな子。
それに対して私はやんちゃでハイテンションで馬鹿丸出しーだったからヤマちゃんとは正反対。

だけど常に一緒にいた。
ヤマちゃんといるとすごい楽しくて。
幸せで、なにより安心してた。
居なくてはならない人で。



多分初恋の人。



そんな彼が。



『ごめんね…カナちゃん…僕、引越しするんだ。』


震えた声でヤマちゃんは下をうつむいて言う。
それがまず嘘だとしか思えなくて。
私は立ち尽くしていた。



『あのね、カナちゃん。お願いがあるの。』