なんでハチがここにいるの?

だって田村くんたちと遊んでるはずだし……いや、時計がないから確認できないけど辺りはすっかり暗くなっていた。


「ったく。スマホの電源切れてるし、今何時だと思ってんの?」


ハチはすごく怖い顔をしていた。

おそらく迷惑なラインや着信のせいで気づかないうちに電池切れになったんだろう。


「ハチ。ミーコが……」

謝るだけじゃ済まないよ。ハチはミーコを大切にしてたし、家族の一員だったのに私は……。


「ミーコなら今家にいるよ」

「え……?」

「さっき母ちゃんから電話があって帰ってきたって」


その言葉を聞いて私は安心して膝から崩れ落ちてしまった。

よかった……。本当にミーコが無事でよかった。


するとハチがゆっくりと近づいてきて、自分の着ていたカーキ色のミリタリーコートを私の体に被せた。


「マジでそんな薄着でしかもサンダルでここまで来るとか本当にやめて。今何月だと思ってんだよ」

……そういえば私、部屋着のままだったんだ。

足が痛いことなんて分からなかったけど、必死で走り回ったせいかよく見ると親指の皮がめくれて血が出ていた。

ミーコが無事だったこととハチの顔を見たら肩の力が抜けて、寒さもようやく感じるようになってきた。


「でもなんでハチがミーコのこと……」

「家に帰ったらナナん家のおばさんが外でウロウロしてて。理由聞いたらナナに煮物持ってけって渡したまま帰って来ないって」

「……」

「その煮物はうちの玄関に置いたままだし、母ちゃんなんてさらわれたって大騒ぎで。それでミーコの姿もないからもしかして……って俺が探しに来たんだよ」

……そうだったんだ。

私もミーコのことで頭がいっぱいで連絡するのを忘れてたし、みんなに心配かけてしまった。


「とりあえず帰るぞ。ほら」

ハチはしゃがみこんでいた私の手を引っ張った。