「相変わらず長風呂だなぁ。逆上せたらどうすんの?」

リビングに行くとハチがソファーに座っていた。


こっちはまたハチが来るんじゃないかと急いで着替えて、髪も半乾きのまま。あんなに急いで服を着たの初めてだよ。きっと最短記録だよ。

それなのにハチは涼しい顔をして「電池~」とか言ってるし、投げつけてやりたい気分。 

今度脱衣場に鍵でも付けてもらおうかな。ハチがいたらのんびりお風呂も入れないよ。


――ピンポーン。

それからすぐにピザが届いた。

空腹だと余計イライラするし、とりあえず温かい内に食べることにした。


「うま~!これ耳までチーズ入ってる!」

ハチは私ほど空腹じゃないくせに、がっついてるし。まぁ、私はどうせ食べられても3枚だからいいんだけどさ。


「……ふふ、はは」

するとなんの前触れもなくハチが笑いはじめた。


「え?え、なに?」

急に笑い出すとか怖いからやめてほしい。


「いや、さっき俺が風呂場で声かけたらバシャンッて慌ててたでしょ?ナナのその姿が目に浮かんだ」

「……浮かべないでよ。ってか笑うとこ?」


私だって慌てるよ。

むしろ「はーい」ってそのまま出ていったら頭のオカシイ人だからね。それでもハチはなにかがツボに入ったらしく、まだ笑いが止まらない。


「だってナナ昔は裸でわーってリビングまで走ってきて、パンツぐらい履きなさいっておばさんと追いかけっこしてたじゃん」


……それ小さい時の話じゃん。

ってか私だけじゃなくてハチもだけどね。

プールの脱衣室とかもふたり一緒に放りこまれてたし、面倒だから一緒に入りなさいってお風呂もそうだった。

ふたりならどこでも遊び場に変わって、裸で水鉄砲したりふざけて怒られるのも一緒。

だからきっとお母さんたちはそのイメージのまま、止まっているのかもしれない。


「ナナも年頃の女の子なんだね」

「なに言ってんの。全部ピザ食べちゃうからね」

「あーダメ!」


年頃もなにも16歳だよ。高校生だよ。

もういつの間にかそんなに長い間ハチと一緒にいるよ。