その日の帰り、私はひとりだった。

ハチは栗原先輩と帰るらしい。

そういえばお弁当はどうなったんだろう?私はハチのリクエストどおり甘い卵焼き入りのお弁当をハチに渡したけど、もし作ってきてたら私ってすごく嫌な女じゃない?

私のお弁当を見て栗原先輩、気を悪くしてたらどうしよう……。そこらへん世渡り上手のハチがうまくやっていてくれてたらいいんだけど。


「あら?七海ちゃん」

突然声をかけられて振り向くと、そこにはハチのお母さんがいた。

近所のスーパーに行ってきたのか両手に食材の入ったビニール袋を持っていた。


「重そうだね。ひとつ持つよ」

「あら本当?助かるわ」

ハチのお母さんは格好も若いし声も可愛いから全然お母さんって感じじゃない。こうして歩いてたら姉妹に間違われそうなくらい。


「七海ちゃん瞬のせいで毎朝学校に行くの大変でしょ?ごめんね。本当にあの子ったら寝起きが悪くて私がなにしても全然起きないのよ」

「はは。大変だけど今に始まったことじゃないし」

「まったく誰に似たのかしらね」

のんびりとした性格は確実にお母さんの遺伝子だと思うんだけど。

ハチは大音量の目覚ましを3つ置いても起きないし、いっそのこと天井から大好きな肉巻きをぶら下げておいたほうが効果があるんじゃないかってぐらい。