1限目は数学。先週やった小テストが返ってきて結果は満点。予告なしの抜き打ちだったから不安だったけど、予習でやってたところがたまたま出たからよかった。


「……はぁ。数学本当に嫌い」

授業が終わって休み時間になっても祐子はそればかり。どうやら結果が相当わるかったらしい。

「祐子は文系だもんね」

「クラスで満点なの七海だけだってよ。七海は本当に理数は強いね」

むしろそれしか得意なものがない。勉強は満遍なくやってるつもりだけど国語なんて平均取れればいいほうだし。


「七海は卒業したら大学に行くんでしょ?ほら、教鞭(きょうべん)とりたいって言ってたじゃん」

私の夢は一応、学校の先生になること。

だからそのつもりで勉強も頑張ってるけど具体的にはまだ決めてない。


「祐子は保育士だっけ?」

「うん。子ども好きだからね」

まだ高校1年だけど2学期も半ばだし、早い人はすでに大学や専門学校のパンフレットを眺めている。

時間が進むのなんてあっという間だし、進路とか将来とかまだまだ先のことだって思ってたけどそうでもないのかもしれない。


「なんの話してんの?」

――その時、背中に重みが。

後ろからひょっこり顔を出したのはハチだった。