「ってか……なにこれ?」

私の部屋でハチがなにかを発見した。慌てて取ろうとしたけど背の高いハチにそれを阻まれる。

ピョンピョン跳ねてようやく取り返した袋。その中には割れた犬の置物が入っていた。


「落として……割れたの」

それはあの時だ。なにかガシャンと音がした気がしたけど家に帰ってよく見たら割れていた。

せっかく今日買ってきたのに。しかもふたつとも同じ右足がポッキリと。


「うーん、確かこの辺にボンドあったよね?」

ハチはなにを思ったのかガサカザと私の引き出しを漁りはじめた。確かにそこにはハサミとかカッターとか入ってるけどなんでハチが知ってるんだろう。

しばらく使ってないからボンド固まってると思うけど、ハチは無理やり押して犬の足を直してた。


「これひとつは俺の分でしょ?」

「……」

思わず否定しそうになったけど形も色も同じやつ買ってきちゃったし、どっちも自分のだ!なんて言い通せないしなぁ。

直った置物はテーブルの上に仲よく並べられていた。


「いるならひとつ持っていけば」

「はは、なにそのツンデレ!」

どうせ数ヶ月後にはホコリ被ってそうだけど、
それを分かって買ってしまった私が悪い。


「ってか勉強するから静かにしてよね」

「はいはい。俺は漫画の続きでも読もーっと」


本当はデートのこととかあのこととか聞いてやろうって思ったけど、ハチがいつも通りのハチだったから止めた。

そもそも恋愛の話とかハチとするのはちょっと照れるし。あの場面を見てた~なんて言ったらハチも可哀想だよね。