ハチと私は幼馴染みだよ。
でもハチが好きだよ。だれよりも。
だから離れたくないって気持ちは前より強い。
「恋愛関係になったらいつまでも一緒にいられないかもしれないよ」
「いればいいじゃん。高校卒業しても、社会人になって大人になって、いつかお婆ちゃんになってもずっといればいいじゃん」
ハチは簡単になんでも言う。
だけどそれが不可能じゃないかもって思えちゃうのがハチのすごいところ。
「ハチは私が好き?」
「うん」
「どこが?」
「どこがとかない。ナナのことはなんか好き」
なんかって……それってどうなの?
まぁ、私も同じ質問されたら返答に困るし、具体的な理由を言われてもそれはそれで恥ずかしかったと思うけど。
「だって顔が好みなら太ったり痩せたりしたら、そうじゃなくなるかもしれないし、気が合うからって理由なら気が合わなくなったら終わり。面白いとか優しいとかもいずれ変わるし」
「……」
「だから〝なんか好き゛のほうがずっと好きでいられるじゃん」
ハチの無邪気な笑顔。
今まで何度も見てきたけど飽きなくて、あぁ好きだなって思えるひとつの理由。
もうきっと今までの私たちには戻れないかもしれないけど、不思議と戻りたいとは思わない。
私はそれを確認するようにハチの手を握った。