「やだやだ、なにすんの」
ハチは強引に私の手を掴んだ。振りほどきたくてもできなくて、こんな時に男の力を使うなんてズルい。
「うるせー黙れ」
オレンジ色の街灯に照らされるハチの顔。
さっきまで車があんなに行き来してたのに、こんな時に限って周りは静かだし私の心臓の音が破裂しそうなぐらいうるさい。
「……んっ」
ハチはゆっくりと私にキスをした。
その何秒間、息をするのも忘れていた。
ドクンドクンとまだ不整脈だけど、イヤな気持ちも逃げたい気持ちも一切なくて、むしろ心にあったモヤモヤがなくなっていく気がした。
そっとハチが私から離れる。少し見つめ合ったあと、私はその肩を思いきり叩いた。
「バカバカ!ハチのバカ!本当にバカなんじゃないの?」
ずっと隠していたのに気づいてしまった。
気づきたくなかったのに、もうただの幼馴染みには戻れない。
「……もう駄目じゃん。ずっと考えないようにしてたのにキスなんかしちゃったらさ……」
「……」
「ハチにドキドキしてるって認めなきゃいけなくなるじゃん。バカ!」
家族だなんて言えないよ。だって家族にドキドキなんてしないもん。
「はは」
「笑うな!」
「いて」
少し赤くなってるハチ。
「うん。ってか俺も」
それを聞いて私もだんだんと耳が熱くなっていった。