なんで距離が近ければ近いほど、もっとって欲張りになってしまうんだろう。
「私はハチとずっと幼馴染みでいたかった。
……それなのに私は前の私じゃない」
ハチに対してのこの感情なんて本当はすべてなくなって欲しい。幼馴染みだけではないハチへの気持ちが芽生えてから私はずっとなにかがヘンだ。
「全部ハチのせいだ。優しくしたり突き放したり、もう自分でもなにがなんだか分からない。
ハチなんて嫌い……大嫌いだよ」
そう自分に言い聞かせていた。
ハチに恋なんてしない。
絶対絶対しないから。
黙って私の話を聞いていたハチは歩く足をピタリと止めた。そして……。
「分かった。じゃ、はっきりさせよう」
ハチはそう言って私を背中から下ろした。
地面に着いた私の足はいつの間にかしっかりしていて、ちゃんと自分で立てるようになっていた。
「俺もナナと幼馴染みでいたいしそれは変わらない。でも俺たちずっと恋愛感情って部分では避けてたっていうか、考えないようにしてただろ」
ハチが真剣な顔で私を見る。
「だから今から目瞑れ」
「はい?」
本日2回目のこの言葉。
さっきはすんなり受け入れたけど、今のこの状況とは訳が違う。恋愛初心者の私だけど、なんとなくこの先の展開がなんなのかぐらい分かるよ。