もうダメだと覚悟を決めた瞬間、ガレージのシャッターをドンドンッ!!と何回も叩く音。
次にドンッ!と蹴破るような大きな衝撃があって、一瞬建物内はシーンと静まり返った。
また仲間でも来たのかもしれないと怯えていたけど、男たちが慌ててたからきっと違う。
「ーーナナ!!」
蹴破った場所から現れたのはハチ。
私は恐怖で幻でも見てるんだろうか。
ここにハチがいるわけない。来るわけがない。
でもでも……。
「……うぅ……ハチ……」
幻でも夢でもハチの顔を見たら一気に力が抜けて涙がでた。
「な、なんで瞬が……」
栗原先輩の動揺した声が耳に聞こえた。
「お前だれ?」
「ここ部外者は立ち入り禁止なんだけど」
標的は私からハチになって、その鋭い眼差しがハチに向けられた。それでもハチは真っ直ぐに私のほうに歩いてきて、目と目が合った。
ハチがなにを言いたいのか、私がなにを言おうとしてるのか、お互いに以心伝心した気がした。
「ナナ。俺がいいよって言うまで目瞑ってて」
「……」
「お願い。すぐ終わるから」
本当は逃げてって言いたかった。
だって私はハチが傷つく姿は見たくない。だけど私が傷ついたらハチもたぶん一緒に傷つくと思うから。
だから私はハチの言うとおり目を瞑った。
見えるはずないのにハチの安心した顔が見えた気がして、私はただグッと拳に力を入れた。
バコバコと鈍い音が耳に聞こえてくる。
怒号と静けさの繰り返し。
きっとハチは喧嘩してる姿を私に見せたくないんだね。ハチは平和主義だからこんなこと得意じゃないはずなのに。
ごめんね。ハチ。
怖いなんて言う資格ない。
ハチにこんなことまでさせて本当に私はバカだ。
だけどハチを見た瞬間、安心した。
それは心から、言葉では言い表せないくらい。