「ってか八島くんと栗原先輩が付き合いはじめたってマジ?」
教室に着いて一息ついているとガタンッと前の席に祐子が座った。その体勢は少し前のめり気味。
「んー、らしいよ」
私は机から教科書とノートを出して次の授業の準備をした。でも祐子はそれどころではないと教科書を退けて話を続ける。
「栗原先輩ってあんまりいい噂聞かないけど大丈夫なの?」
「大丈夫って……私は知らないよ」
私だって昨日聞いたばっかりだし。
栗原先輩は男好きとか彼氏が途切れたことないとか聞いたことがあるけど……。まぁ、あの容姿だし別れたらすぐに男が寄ってくるんだろうな……とは思う。
「ってかアンタたち両想いだったんじゃないの?」
「はぁ?」
祐子がマジで言ってるから思わず吹き出してしまった。
「私とハチが?なんでそうなるの?ただの幼馴染みだよ」
「幼馴染みでもあんなに仲いいの珍しいじゃん!
七海はともかく八島くんは絶対七海のことが好きだと思ってた」
ハチが私を?ありえない。
そうやって勘違いされやすいけどお互いに恋愛対象じゃないから15年間一緒にいれたんだよ。
恋愛なんていつか終わるじゃん。
何度もないないと否定してるのに祐子は納得できないとムキになっていた。
「本当にないよ。私とハチは幼馴染みだもん」
だから私たちの関係に終わりはない。