私は多分ものすごく中途半端なことをしてる。
今さらだけどそれに気づいた。
「あの健二くん……」
ちゃんと言わないと。
私は健二くんのこと友達以上には見れないって。だからもう会うことはできないってしっかり伝えなきゃ。
そう決意して健二くんの方を見た瞬間、グイッと肩を掴まれた。私の瞳に映る健二くんがだんだんと近くなる。
「七海ちゃん」
名前を呼ばれて唇が重なる寸前で私は健二くんを突き飛ばした。
「嫌っ……!」
ドクンドクンと心臓がうるさいのは胸の高鳴りじゃなくて、恐怖心に近かった。
「ご、ごめんなさい……」
先に謝ったのは私のほう。
何回も会えば健二くんだって好意があるものだって思うだろうし、私の行動はだれが見たって勘違いさせてしまうものだったと思う。
本当に本当に申し訳ない気持ちしかないけど、健二くんからキスをされそうになって、体がすぐに拒否した。
今までの浅はかな自分と健二くんを突き飛ばしてしまった罪悪感で私は顔を上げることができない。
すると健二くんはポンポンッと2回私の頭を叩いた。
「俺のほうこそ焦っちゃってごめん。そろそろ暗くなるし帰ろうか」
健二くんの優しさが身に染みて、グッと涙を堪えることしかできなかった。