「何?耳元でささやかれるの好き?」


途端、赤くなり始める耳。


何だ、これ。


何でこんなかわいいんだよ。


俺はどう理性を保てばいいわけ?


ぎゅっと抱きしめたまま、耳たぶにちゅっと軽いキスをする。


けれど、莉菜子は嫌がるように首を横に振ってから耳を手で覆った。


いつもなら無理やりこの手をどかすところだけど、今日、それはしない方がいい。


「ごめん、もう意地悪しない」


出来るだけ優しい声を意識して話す。


途端、腕の中で抵抗をやめる莉菜子。


「ごめん、不安にさせてるとか全然気付かなかった。でも莉菜子、本当は知ってるでしょ?俺がどれだけ莉菜子のこと好きかなんて」


腕の中の莉菜子は小さくつぶやいた。


「そういうことじゃないんだもん」


「え?」


「もういいっ」


一瞬の隙で腕をふりほどかれる。


涙を拭いながら走りだそうとした莉菜子の手首を掴む。


「待って、ちゃんと話そう」


「嫌!話して!」


この状況で離せるわけないだろ。


「とりあえず落ち着けって」


「落ち着いてる!落ち着いてるもん!」


どう見たって落ち着いているようには見えない。


ここまで来るともう抱きしめても逆効果な気がして、そうなるともうどうするべきなのかわからない。