軽く走りながら、莉菜子の背中を探す。
莉菜子は靴箱に近い廊下を1人とぼとぼと歩いていた。
さすが女子。
この距離でもバテるのか。
息を整えているのか揺れている肩に追いつき、後ろから強く抱きしめる。
「やだっ・・・」
そこで初めて気付いた。
莉菜子の涙に。
「やだっ、離してっ・・・」
腕の中でもがく莉菜子をぎゅっと抱きしめる。
彼女の耳は俺の口のすぐ前にあって、けれどこの状態で俺の思いを話したりすれば「女の子は耳元で優しくささやけばいいとか思ってるんでしょ!?」なんて言われかねない。
「何で逃げるの?」
まずはそう聞いてみる。
けれど、俺は見逃さなかった。
彼女がビクッと体を震わせたことに。
いや、そういうつもりで言ったんじゃないんだけど、こういう反応をさせるように仕込んできたのは紛れもない自分だ。
ちょっとした意地悪心がわく。