莉菜子は鞄を持つと、俺の横をすり抜けて、走っていく。
「莉菜子!」
呼び止めてはみたものの、それだけで止まってくれないあたり、相当怒らせてしまったらしい。
「追いかけなよ!」
怒りに近い表情でこっちを見る若松に向き直る。
「あいつ、いつから不安とか言ってた?」
「いいから今は追いかけなって!」
「大丈夫。5分後追いかけても絶対追いつくから」
バスケやってる俺の言葉を信じてくれたらしく、若松は教えてくれた。
「・・・莉菜子が不安だって言い出したのは1ヶ月前くらい前からかな」
1ヶ月もですか・・・。
いや、これは完全に側にいて気付かなかった俺の不注意だ。
「了解。ありがと。彼女の相談乗ってくれてたのにごめんな」
「全然。莉菜子のこと、ちゃんと安心させてあげて」
その言葉に深く頷いてから教室を出る。多分、今からなら本気で走らなくても追いつける。