汗が出て来そうな勢いだった。


トーク力だけはあるはずの俺が全く話題を見つけられない。


何を話せばいいかわからないなんて経験は多分生まれて初めてだ。


やばい。どうしよう。


「陽太らしくないね」


「え…?」


「いっつもふざけて騒いでるのに」


だってそれは…。


そこまで思って気付いた。


チャンスは今なんだと。


「あのさ、実音。俺…1つ実音に謝らなきゃいけないことがある」


そう切り出すと、実音は俺を見上げた。


俺はまっすぐに実音を見つめて続ける。


「いつもからかってばっかでごめん。実音を傷付けようとかそう言う悪意は全然ない。マジでごめん」


何、逃げてんだ、俺。


これじゃあ核心が抜けたままだ。


実音はうつむくと黙ったまま何も言わずにいた。


「これからは気を付けるな」なんて笑って話をまとめて、別の話題に変えてしまいたい気になった。


だけどそれじゃあ根本的には何の解決にもなっていない。


この先またこうやって2人きりになれるとも限らない。



「今までさ、実音のこといろいろからかってきたけどさ…それ、実音のこと好きだからなんだ」