その時、実音の声は追いかけてきた。


「何の話?」


「え…?」


びっくりして振り返ると、実音はうつむいたまま今にも消え入りそうな声で呟いた。


「さっき…何か言いかけたから」


え…?


「と、友達は?」


「…先、帰ったけど」


え…?


もしかして待っててくれた…?


嬉しさと申し訳なさが入り混じる。


もしかしたら俺は一番しちゃいけない人に意地悪をし続けていたのかもしれない。


「久しぶりに一緒に帰らない?」


そう声をかけると、実音は立ち上がって俺を抜かすと歩き出した。


それを追うように俺も歩き出す。