玄関で靴に履き替える。
そのまま校舎を出ようとして足を止めた。
玄関に入ってくる階段の端に、ちょこんと座る実音の後ろ姿があった。
ドキリと心臓が波打つ。
近くに友達の姿はないから、どうやら待っているらしい。
気まずい。
さっき自分がごまかしてしまっただけに。
だけど何も言わずに通り過ぎるのは感じが悪い。
気まずくしたのはまぎれもない俺自身だし。
実音の後ろ姿に近付くと、階段を一段降りて、顔を覗き込む。
「帰らないの?」
実音はこっちを見なかった。
何の返事もない。
そうだよな、当たり前だ。
「いや…ごめん。また明日な」
それだけ言って、階段を降りる。