教室に付く頃、俺の不安は心を覆い尽くすほど大きくなって、自分でも押さえきれないほどだった。
これでもし莉菜子が教室にいなかったら。
どうしようもない不安を抱えて、ドアに手をかける。
こんな時にだけ都合よく神様なんて思う自分がいる。
情けない、本当に。
小さく息を吐く。
その後でガラッとドアを開ける。
教室の中に莉菜子の姿はなかった。
誰もいない静まりかえった教室。
何だかわからないけれど、泣きたくなった。
男の俺がこんなことで泣くとかおかしいし、実際には泣いたりしないんだけど、この気持ちは多分泣きたいと言う感覚に一番近い。
言葉にすること。
それがどれだけ大切なことか俺は今日やっとわかった。
もっと早く気付いて伝えなきゃいけなかった。
ちゃんと自分の思いを言葉にするべきだった。
恥ずかしいとか照れくさいとかじゃなく、何度だって言うべきだった。
特別な日じゃなくてもいい。
思った時に、求められた時に、ちゃんと言葉にするべきだった。