教室に向かいながら、俺の心の中には確かな不安があった。
今日、俺は莉菜子と口を聞いていない。
もしかしたら教室に莉菜子の姿はないかもしれない。
思えば今までだって約束はしていない。
教室に荷物を取りに行けば必ず莉菜子がいつだって待っていてくれていた。
だからこそ俺も必ず教室に寄ってから帰るようにしていた。
それが答えになっていると思っていた。
約束なんかしていなくても、莉菜子は待っていてくれて、俺は教室に向かう。
それでお互いの心は通い合っているものだと思っていた。
約束をしていないことの不安さを俺は今日初めて実感した。
もしかしたら莉菜子はずっとこんな不安と1人戦っていたのかもしれない。