莉菜子と一言も言葉を交わさず、それどころか一回も目を合わせることすらなく、部活が始まってしまった。


レギュラーの俺が集中しないわけにはいかない。


わかっている。


わかっているけど、いつものようにゴールが決まらない。


仲間のパスが取れなくて、簡単なフェイクにすら引っかかる。


「どうした、桐山、具合悪いのか?」


ベンチに戻され、顧問に聞かれる。


「いえ、すみません。何かちょっと・・・」


「違和感があるのか?」


「あー、まぁそんなとこです」


「そうか。それなら今日はもう上がれ」


「え!?」


突然の早退命令にびっくりして顔を上げる。


「もうすぐ大会も控えてるし、その時お前が万全じゃないと困るんだよ。大事をとって今日はもう上がりなさい」


顧問はそういうと、席を立って歩いていってしまった。