「明後日は、どうかな?」

一番早いバイトの休みの日だ。

「明後日?……ああ、うん。いいよ」

でも、詩織は違う。

僕に振り回されてないどころか、逆に僕が翻弄されている気さえする。

簡単に言えば、詩織は今まで僕の周りにはいないタイプにみえた。

そんな詩織のことを、もっと知りたいと思った。

「時間は?任せるよ」

「じゃ、昼ごはんにパン食べようよ」

彼女の提案に僕はうなづく。

「待ち合わせは、この場所でいいかな?」

「うん、大丈夫。ここから歩いて10分くらいだよ」

詩織はパン屋がある南の方を指差す。

風になびいた詩織の髪が僕の頬をかすめ、くすぐる。

ドキッとした心が、彼女にバレないように視線をユキヤナギへと向けた。

「オッケー!じゃ、明後日の昼に、またここで」

「うん」

詩織はそう言ってまた、左腕の時計をチラッと見た。細いベルトのそれは、詩織の白く細い腕によく似合っていた。

やっぱり……きっと帰らないといけない時間なんだろう。門限などがあるのかもしれない。

「そろそろ帰る?」

「……うん、そろそろ帰らなくちゃ」

「じゃ、僕も帰ろうかな」

僕が立ち上がりお尻や足についた草を払うと、詩織も同じようにスカートの草を払った。

お互い制服で会えるのは最初で最後だな、なんて僕は考えていた。