そのあと僕は詩織と同じ南中学だった同級生を思い出そうとしたが、残念ながら頭の引き出しには残されていなかったようだ。

僕の通っていた高校はここからは少し遠いので、同じ地元の出身者が少ないのは仕方がない。

僕は諦めて、いつの間にかオレンジ色の夕焼けに包まれている空を見上げた。


「ここにはよく来るの?」

ここで誰かに会うのは珍しいことだった。

我ながら、なかなかいい質問だ。

「ん?たま〜にね。考え事したい時、とか」

たまに来る僕と、たま〜に来る詩織が、たまたま今日出逢ったということか。

「そっか、考え事があったんだね。なんか、ごめん」

先客の僕が、何を謝ることがあるんだ?

でも、詩織は1人になりたいんじゃないか……そんなことが頭をよぎる。

「いや、別にいいよ。春太くんと話してたら楽しいし」

楽しい?本当かな……本当なら嬉しいけれど。

今さら急に帰るのもわざとらしいし、僕はもっと詩織と一緒にいたいんだ。

「そう?なら、いいけど」

詩織の言葉に優しいウソはない、僕はそう捉えることにした。