「ん〜?どうかなぁ……ちょっとは大人になったかな」

「こんな指輪を買えるくらいには?」

詩織が指輪を見せながら茶化す。

「あはは、うん」

確かに、高校を卒業したばかりの僕には中華屋でご馳走するくらいが精一杯だったよな。懐かしいあの頃、ただただ楽しかった。

大人になった2人。

あの頃は、漠然と描いていた未来、夢。
それが1つ、今日現実となった。

すっかり日が暮れた丘は、思っていた以上に肌寒く感じた。

僕はもう少し詩織とこの幸せの余韻に浸っていたかったから、念のため持って来ていた上着を詩織の肩にかける。

「ありがとう、春太は寒くない?」

「ん、大丈夫だよ」

僕がそう言うと、ふと微笑んだ詩織が僕の左肩に優しくもたれてきた。甘えたい時の詩織だ。

「どうした?」

「ね……ずっとずっと一緒だよね?」

静かな、甘い声に胸がキュっとなる。

「もちろん、ずっと一緒だよ」

僕も優しい声で答えると、詩織は顔をあげ僕を見つめた。

「生まれ変わっても?」

「あはは、うん。そう願うよ」