「お巡りさん!!」



バンッ………―――――



「ぃ゛…っ、……」



殊犂はゆっくりと崩れ落ち、片膝をつく。



蜜穿は肩越しに見えた危険物から前に出て庇おうとしたのだが、それに反応した殊犂に押し退けられ逆に庇われてしまった。



「(お巡りさん…)」



右手で撃たれた左脇腹を押さえるが、左手は咄嗟にそばにしゃがみ込んだ蜜穿の右腕を掴む。


行くな、という意味を込めて。



「俺がおったから、魅園も廓念会でかい顔でおれんねん。みつばちを見っけたんも俺や。俺のおかげで救われた命もあるんや。みつばち、お前がそうやろがっ!」



裏の世界の為に叡執の成し遂げた偉業は数知れない。



「いくら大義名分を並べ立てても、悪事に手を染め罪を犯してはならない。貴様のような人間の恩恵など、誰一人として必要とはしていない!!」



殊犂は至極当たり前のことを言っているのだが、蜜穿には身に染みた。



失う物なんてないと、孤独にも慣れたフリして。


信じられる物など、己だけだなんて。



そうやって自分を粗末にして何を守れた?



独り立った大地に広がるのは、屍でも惨劇でもなく、無でしかない。