「ごほごほ……」



繁忙期の世間でバイト続きだった身体を休めようと、自分にしては珍しく大人しく家に帰った。


剣に貰ったスイートピーを、花瓶なんてものは無いのでコップに飾る。



帰って寝るだけの殺風景で生活感の無いワンルームの、そこだけ少し華やかになった気がした。



「家に花やなんて、めっちゃ違和感やな。」



頭の中に描く観客席には蜜穿しかおらず、勝手に上映を始めた映写機が映すは、あの時のその場所のこんな出来事。



暴力が躾という父親は、ろくに仕事もしないくせに、借金までして依存したのはギャンブルとアルコール。


暴言が会話という母親は、何故結婚したのか分からないほど夫に興味が無く、買い物に依存し借金を重ね男の為に着飾った。



栄養失調になっても放置された蜜穿は、取り立てに耐えかねた両親合意の決定事項により組と交わした約束で売られた。


終わり無くカタカタと回り続けるのに続きは無いようで、ザッピングしながら途切れるのは同じ場面。



鏡花水月の様に、組員と話す両親の顔は忘れない。


自らの子と別れなければならないのに、甘い蜜を吸ったあげくに去り行く両親の清々しく晴れやか顔は。