「なんや久々にアツアツやな。」


「ご馳走さん!」



鰍掩も楮筬も嬉しそうだ。



「飴魏蜜穿っ!!」


「おーことり!なんや、昇進したらしいな。ワイン飲んでいけ!」



いつものように殊犂が来ると、噂を聞いたらしい楮筬が祝いだと勧める。



「結構だ!それに昇進ではなく昇給だ、間違えるな。」



「どっちでもええけど、ことり。地位の階段ちゅーんは、登れば登るほど高ければ高こうなるほど、転がり落ちるんは一瞬や。一歩ずつ登る度に、地道な経験をストッパーにせなあかんで。一気に高こうなってしもうたら、それは階段やなくて坂道や。気ぃ付けなあかん。世の中そんなに甘くないさかいにな、よー覚えときや。」



栲袴の殺人未遂を止めたり、蜜穿への聴取や荊蜻の抜けた穴を後任が決まるまで埋めるなどの功績による時期外れの昇給。


現実的には、現役警察官である荊蜻の不祥事に対する口止め料であり、殊犂の正義感溢れる性格に釘を刺す目的も兼ねている。



「余計なお世話だ!努力も諦めるのも己にしか出来ないことぐらい、貴様に言われずともな!」



だからだろうか。


上の意向を分かっている殊犂の機嫌はいつもより悪い。