それからあっという間に番が回ってきて、二人並んでおさい銭箱に5円を投げた。

一緒に手を合わせて、神様にお願いする。


(今年こそは…、今年こそは~~~…っ)


去年もそうだった。

やけに力が入って、参拝した後ぐったりした。


「…………、」


ふいに隣で手を合わせる安堂くんが視界に入り、あたしは「あっ」と声が出た。


「て、手袋外してる…!」

「神様に願うのに手袋で手は合わせられないでしょ」


安堂くんは綺麗なまぶたを見せたまま、小さく言った。


(こ、このせいかっ!!)


去年も一昨年もその前も、あたしは手袋をしたままだった。

外気に触れた手は、すぐさま体温を下げていく。


(神様~~…!今年こそ彼氏を…)


「ふぎゃっ!!?」


目を閉じてお祈りしていると、頬に冷たい何かが触れた。

それは、安堂くんの、それはそれは冷たい手だった。


「安堂くんのバカー!!!」


砂利道を歩きながら、いたずらしてきた安堂くんに手をばたつかせて怒った。


「年明け早々、神様に奇声聞かれちゃったじゃない~~!!! これで今年も彼氏出来なかったら、安堂くんのせいなんだかんね~~~!?!?」


半ベソかいて、安堂くんに訴える。


「数年越しで叶わないなら、神様の力しても叶わないってことなんじゃない?」

「なんだって?」


酷いことを言う安堂くんに目を据わらせる。


「ほら、恋みくじ。するんじゃないの?」

「………する」


何だか飼い馴らされてきている気がする。

おみくじを前にすると、怒りもどこかに飛んでった。


「安堂くんはしないの?」


そこまで言って、ハッとした。

今のこの言葉は、安堂くんの失恋の傷をえぐる言葉だっただろうか。

やっぱり今のなし、と安堂くんに背を向けると、安堂くんが言った。


「…じゃ引いてみようかな」

「……!」


二人で、おみくじを引くことになった。