教室にいる時の安堂くんとはまたちょっと違くて、話していると楽しくて、いつの間にか時も過ぎてる。


(…意地悪なんだけどね!どこかがすっごく意地悪なんだけどね!)


でも、優しい一面も知っている。

…どこが?って言われたら、例えが出てこないけど、教室で見る時の安堂くんとは全然違う面を知っている。


(泣き虫だし、甘えん坊だし…)


「こーばーやーし!」

「ぷぎゃっ!?」


突然鼻を摘まれて、反射的に目を瞑った。


「な、な、なに!?」

「今、目開けたまま寝てたでしょ。飲み物、何がいい?って聞いてんの」


目の前の安堂くんをパチクリとした目で見つめた。







「…こんな時にカフェオレとかありえない」


カフェオレを飲むあたしに、コーヒーを飲んでいる安堂くんが眉を寄せた。


「……そのコーヒーもカフェオレと大して変わらないと思いますが?」

「……悪かったな、甘党で。要は、こんな寒空の下で、よくそんな冷たいのが飲めるね、ってこと」


無表情をベースに、脱落系の呆れた目がこちらを見下ろしている。


「………そんなに寒がりなのに、どうして初詣なんかに来たの?」


カフェオレのパックを手袋で挟んで、ぐるぐると回した。


「……願い事、したかったから」


無表情のまま、安堂くんはぽつりと答えた。


「初詣ってそういうものでしょ?」

「え、いや…。そうだけど…っ」


でも、そうじゃなくて。

こんな寒い思いまでして、願いたいことがあるの?

そう思うと、安堂くんの願い事は1つしかないような気がした。


――先生のこと。


寒空の下、神頼みしたい程、今もまだ……好きなのかな。

安堂くんの横顔が何だか切なく思えた。

少しだけ、胸の奥がチクリとしたのは、安堂くんの想いの丈を知ってるから。


(切ない、ですね…)


「小林は何お願いするの?今年こそ彼氏出来ますよーに?今年こそはご利益あるといーね」

「…ムッ!」


こっちはアンタのために胸を痛めているというのに、この男は…!


「今年はお守りも買った方がいいんじゃない?恋愛成就のお守り」

「去年も買いましたが!? それでも出来ませんでしたが!?」


安堂くんが噴きだした。