どうにかこうにか時間を潰して、憎たらしい本もきちんと片付けて、仕方ないので雪が降らないかと窓の外を窺っていたら、新年まで残りも10分となっていた。

そこで、ピロリン、と携帯が鳴る。

あたし並に、暇人がいたらしい。

ちょっと気の早いあけおめメール。

少しだけ嬉しくなって携帯を開いた。


「――――え?」


安堂…くん…!?

しかもメールの内容が、ありえない。


[家の前まで来てるんだけど、出てこれる?]

「………っ」


携帯を持ったまま、慌てて窓の外を見下ろした。

窓の外、目を凝らして見ないとよく見えないけど、確かに人影が見える。


[そこにいるの…!?]

[…うん]

[……何で?]

[大晦日だし]


(答えになってな……っ)


画面を見て戸惑っていると、続けて届いた。


[いいから早く出てきてよ]


そう言われて、出て行かないわけにもいかない。


[10分待って!準備するから!]

[化粧はいーよ。寒くて死ぬ]


「……………、」


お化粧だなんて言ってないのに、図星をさされた。

でも確かに、雪が降り出しそうなこの寒空で待たせるのは気が引ける。