センセーと3年付き合ってた、って話をした瞬間も、何て言葉を掛けてあげればいーんだろう、って動揺しているのが手に取るように分かった。


「そうなんだね……」


明らかに意気消沈している。

だから何で小林が。

俺より落ち込んでんの。


「もう数年前の話だし、この通り、女の小林よりも部屋、綺麗に片付いてるよ」

「…なっ…!」


意地悪を言うと、いつもの元気な小林に戻る。

怒ったり、叫んだりする姿は、見ていてかなり笑える。


「だってあの時は、安堂くんが来るなんて思ってなくて!!! それにいろいろあったから、もうなりふり構ってもいられなくてぇ…!!!」

「確かに凄い出で立ちだったな。すっぴんの……」

「言わんでいいっ!」

「………っぅ!!!」


後ろから、頭頂部の髪をギュッと引っ張られる。


「……俺、病人なんですけど」

「ゆ、夕方のお返しよ!お返し!忘れてあげるけど!」


ちら、と横目で後ろを見ると、小林は少し赤らんだ顔をしていた。

ちょっとは危機感、感じたってことかな。

じゃないとこの女、男なら誰にでもホイホイついて行きそうだ。


「ほら!出来たよ!歯磨きしたらさっさと寝る寝る!」

「…………、」


妙に、年上ぶってるその口調にイラッとする。


(昨日、17になったばっかのくせに)


俺の方が誕生日、早いんですけど。

でも、その言葉は飲み込んで、俺は歯ブラシを取りに行った。

小林は俺を何だと思っていたのか、食材やアイスノンと一緒に歯ブラシまで買ってきていた。

『さすがあたしー!』と自画自賛して、自分用に使うことにしたらしい。


――――って。


「……なっ…!?」


歯磨きを終えて、部屋に戻ってくると、小林がこの部屋にかけ布団を持ってきていた。

客間を使えって言ったのに、この女…!


(全然、危機感強まってないじゃん…!!)


「客間で…、寝ろよ…っ」