『え、うそ!え、マジ!? だれ!!!』

「そ、それはまだ……、その…」

『言えないの?』


なべっちの、寂しそうな声が胸に痛い。

事情が事情でなければ、相手がこの人でなければ、そして本当にラブい外泊であれば、喜び勇んで言えるのに。


「…ごめん。今は、まだ……」

『オッケー!分かった。今は聞かないでいてあげる。でも絶対教えてよね!待ってるから!』

「……うんっ!」


強く、携帯を握りしめた。

あたしとなべっちでもう一人の友達の家に泊まりに行くことにして、その旨をお母さんに連絡した。

初めての経験でドキドキと心臓は怯えていたけど、意外とあっさりOKされた。


(もしやバレてる…?…まさかね)


自分にそう言い聞かせて安堂くんの部屋に戻る。


「女の電話って長いね」


嫌味を言ってるつもりらしいが、今の安堂くんにそんな力はない。


「……送るよ」


そう言って、起き上がろうとする。

フラフラのくせに。


「いーよ。あたし、今夜泊まるから」


充分時間が置いてから、安堂くんがこちらを向いた。


「――――は? お前、何言って――…」

「もう親にも連絡したもん。ほら、あたしがついててあげるから、寝た寝た!」


結局、あたしが来てから、安堂くんは一睡もしていない。

朦朧としているくせに、数分おきにあたしがいるかいないか、確認するせい。

起き上がっていた安堂くんの体を押して、ベッドに寝かせようとした。

でも安堂くんは眉間にしわを寄せて、あたしへと視線を向ける。


「親に何て言ったんだよ」

「なべっちと友達んちに泊まるって言ったの!ほら、よくあるお泊りアリバイってやつ!? 彼氏に使うんじゃないからちょっと癪だけど」

「…お前、これがどういうことか分かってんのかよ」

「親に嘘ついてるってことくらい、それがいけないことってくらい分かってるわよ」


ムッ、として安堂くんを見る。

安堂くんは未だに眉間を寄せて、あたしを睨んでいた。