それからというもの。

お皿を片付けに行く時も、アイスノンを準備しに行く時も、なんにも口にはしないけど、常に視線が向けられていた。


「…………なに。さっきから」

「…なんでもない。」


聞けばこうやって、こちらに背を向ける。

なのに部屋から出て行こうとすると………。


「………………、」


(そんな瞳で見ないでよ~~~!!)


だから結局、食材達と一緒に買ってきた雑誌を広げて、ベッドサイドに置いた椅子に座っていた。

雑誌も、今は返り咲き。

彼氏を作るために、猛烈に勉強している。


「……今もまだ彼氏欲しいの?」


おでこに冷えピタを貼った安堂くんが虚ろに言った。


「…欲しいに決まってるでしょ。毎日絶賛募集中よっ」

「……いなくていーじゃん。彼氏なんて」

「―――え?」


ふいに言われた言葉に、雑誌に落としていた視線を上げた。

安堂くんはゴホゴホと苦しそうに咳をしながら、


「胸小さいんだし」


って!


「どういうことよ!! ――ってか!あのプレゼントは何なのよ~っ!!!」


顔を合わせたら文句を言ってやる!って意気込んでたのに、玄関先に倒れているのを見た瞬間、それも全て吹き飛んでいた。

真っ赤に怒って、目の前で寝ている安堂くんを睨む。


「…………………、」


って、無視!

安堂くんは咳をしながら、壁側へと寝返りを打った。


やれやれ、と、テレビの傍に置かれたデジタル時計を見ると、安堂宅に来て、既に1時間半が経過していた。


(……さて)


「帰るの?」


立ち上がると、こちらに背を向けたはずの安堂くんが言う。