ナッチに、安堂くんと会っちゃった!ってメールすると、やっぱり今日がチャンスだよ!って返事が来た。

そんな言葉にドキリとして、安堂くんを盗み見したらもっとドキッとした。


「だったらケーキ買っていく…?安堂くん甘いの好きだったよね?」


コーヒーも絶対砂糖とミルク入りだし、チョコだって…。

………あのチョコ、どうなったんだろ。


「……俺、チョコケーキね」


ケーキ屋さんの中、ガラスケースの中を見て安堂くんが言った。


「う、うんっ」


その距離がやたら近くて、目の前にそんな綺麗な顔があるからドキドキした。


「ち、チョコケーキを2つと、ショートケーキ、1つ、下さいっ」


あたしは慌てて、店員さんに注文した。






「お…お邪魔しまー…すっ」


3回目となる安堂くん家。

1回目、2回目と違うドキドキに胸の中が占領されていた。

いつ来ても綺麗に片付いていて、そして驚くくらい、静かだった。


「親父は仕事だから、テキトーにあがっていーよ」


靴を脱ぎながら、安堂くんが言う。

まだお昼だし、それは理解できるけど。

でも。

いつもこのお家には、安堂くんが一人きりだ。


「リビングの場所、分かるよね?」

「う、うん…っ」


安堂くんは鞄を置いてくると言って、部屋に入った。

あたしは出してもらったスリッパを履いて、てくてくとリビングに移動した。

二人で暮らすにはもったいないくらいの広いリビング。

ソファーも大きくて、テーブルも大きくて、凄いお金持ちなんだろうなぁってことが分かる。

でも。

なぜかとっても、寂しい気持ちがする。

リビングを見渡して、ぼんやり立っていると、後ろから安堂くんが顔を出した。


「なにボケッとしてるの?どこでも好きなとこに座りなよ。ケーキ、俺が準備するし」


ブレザーを脱いで、白シャツになった安堂くんがあたしからケーキの箱を取って、広いキッチンへ入る。