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ボタンは冗談、と言うと、小林はうなだれて、携帯を開いた。
ホントはこんなの、あげてもいいんだけど、小林のコロコロ変わる表情を見ている方が面白い。
そんな俺の思惑なんか気付かずに、小林が鼻を鳴らした。
「安堂くん、ここ何てとこ…?あたし、さっきまでナッチと一緒だったんだけど…。はぐれちゃって…」
「…………、」
女ってよく分かんない。
どうしてそこに友情が芽生えるんだ。
「……変なの…」
「え?」
小林が顔を上げる。
俺はそっぽを向いて「いや」とだけ言った。
「……せっかくだし、俺ん家寄って帰れば?」
からかっちゃったお詫びに。
すると、小林の頬が紅潮した。
「えっ!!いいの!?」
「だから有野サンにはテキトーに言い訳してよ」
「え…っ」
「呼ぶの? それはさすがにあんまりじゃない?」
「わ、分かった…っ」
肩を竦めて伝えると、何か言いかけた小林が慌てて頷いた。
あせあせとメールを打つと、携帯を両手で持ったまま、ちらりと俺を窺った。
「なに?」
「何でもないっ」
頬がりんごみたいだ。
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