駅の人込みで、半分くらいの女の子が脱落した。
ナッチと安堂くんは同じ中学だから、下りる駅は一緒だという。
てことはあたしの家とも、駅2つ分。
同じ電車だったので、あたしの家は2駅先だと伝えると、ナッチが今度うちに遊びに来ることになった。
「中学の時も、尾けてたんだけど、途中で絶対見失っちゃうのよ」
ナッチの話を聞いていると、家を知っているとは言い出せなくなった。
家にあがったことまであるし…、
(ま、ましてや泊まってしまったことまで…!!!)
あの時は何とも思ってなかったけど、思い出すと混乱する。
同じベッドに寝ちゃってたし、髪とか乾かしてたし、それにそれに…。
よくよく考えたら、あたし。
(安堂くんとキス、しちゃってんだったぁぁぁ~~~~~~!!!!)
「あ、知枝里、次下りるよ!」
ナッチがあたしの手を引いた。
この駅で下りた時には、あんなにたくさんいた女子も、あたしとナッチを残して、みんな脱落していた。
(恐ろしい男…)
前方の安堂くんの背中を見つめながら、たらりと汗が流れた。
「知枝里、こっちこっち!」
ナッチに急かされ、あたしも急いで改札を抜ける。
(……………あれ?)
この前この駅を出た時は、確か真っ直ぐ進んだのに、今日は右手に曲がっている。
どこか、用事があるの…か?
「知枝里、こっちこっち!」
ナッチに手招きされ、足早にそれを追いかけた。
するとまた、目の前で安堂くんが路地を曲がる。
「知枝里、早く早く!」
右に左に、北に南に、時には振り返ってこちらに戻ってきたりするので、あたしとナッチは追いかけて、隠れて、息のつく暇のないくらいの大忙しだった。
…………そして。
「な、ナッチ、どこぉ…!?」
数分前に迷子になった。
すかさずメールが来て、どこにいるのかと聞かれたが、ここがどこだか分からない。
何となく見たことのある路地を曲がって、ナッチを探していたら、泥沼。
ますます自分がどこにいるのか、分からなくなった。
「ど、どうしよぉ~~~~!!!」
パタパタと路地を走ってみる。
民家は全て同じにしか見えない。
「どーしよー!!! ナッチィー!! あ…安堂くーんっ!!!」
どさくさに紛れて呼んでみた。