いつもの駅に着いた。

バレンタインの日、二人でびしょ濡れになったのは、ここから通りをもう1本入ったところだった。


「……ここで地獄を見たのよ…」


改札を通りながら、ナッチが地獄の声で言う。


「ご、ごめんなさ…っ」

「なによ、謝ることなんてないわよ。あたしはもうフラれてんだから」


ナッチは驚くほどさっぱりしている。

あたしの方がどうしていいか分からなくなって、顔を俯かせた。


「だって知枝里が付き合えたら、あたし、安堂くんと友達になれるかもしれないし?」


隣でナッチが手のひらを合わせて、目を輝かせている。

……女とはタフな生き物だ。