「さくらー、あとでノート写させてもらっていーか?」

「はいはい、いつものことでしょ。
実技の時間ではあんなに目光らせて頑張れんのに
どうしたら座学はそんなに死んだように寝れんのかね」

「さくらがどうしてそんなに起きてられんのか不思議だよ。
絶対人間を超越してるよな」


さくらも櫂と同じようにサロンワークとの両立をしている子だった。


「櫂くんほど夜遅くまで頑張ってないからねー。
私はバイトだし、5、6時間は寝れるから平気なのー!
櫂くんは3時間くらいしか毎日寝てないんでしょ?」


「そーだなー。
3時間寝れりゃいい方だよなー」


「櫂くんの部屋絶対汚いよね」


「んなことねーよ!つか関係ねーし」



自由人、ふわふわしてる、雲みたいな人、近寄りがたい
でも頑張り屋さん

それがクラスメイトの櫂への評価だった。
兄、翔のように人当たりのいい人柄ではない。

むしろ兄を見てきて全く逆の性格になってしまったのが櫂かもしれない。


櫂は同じ境遇にいるさくらとだけはとても仲良くなれた。


「ね、櫂くんてなんでCarina(カリーナ)にしたの?」


「Carinaの意味知ってる?」

「いや、わかんないけど」

「イタリア語で可愛いっていうんだけどさ、可愛いって言われなくなる
年代ってあると思わない?
俺はその年代をぶち壊していつまででも女性には可愛いって言ってあげたいんだよね」

「へー、なんか櫂くんっぽくないね」

「俺もそう思う」

二人して笑いあっていた。