コンコン

「失礼いたします。
 〇〇高校出身の藤堂櫂です。よろしくお願いします!」


「はい、座ってー。
 なんだめちゃくちゃ緊張してるじゃん。笑
 そんな緊張しなくていいからね」


「はい、よろしくお願いします」


「なんでウチなの?」


「はい、実家が床屋なのですが、実家に置いてあった業界誌に
 大原社長の特集が組まれていました。
 それを見て大原社長に憧れを持ちました。
 そしてそんな大原社長の元で技術を学んでみたいと思ったからです」


「ふ〜ん、ウチ厳しいよ?」


「はい、辞めるスタッフがたくさんいるとは聞いております。
 でもそんなヤワな気持ちで高校生ながら面接だけでもとお願いしたわけではありません。
 失礼ながら自分の境遇が大原社長に似ていると思いました。
 同じ次男で兄に敵うところなんて何一つないと感じて今まで生きてきました。
 兄は理容では有名な高梨先生のところに就職しました。
 しかしここで技術を、大原社長に技術を教わることができれば
 兄に負けない。そう思いました。
 だからこそ無理を言ってこちらに入れていただけないかと思いました」


「ふ〜ん、すごいね。
 学生と両立がどれだけ厳しいか知ってる?
 俺は優しくないよ?」


「はい、承知しているつもりです。
 しかし経験してみないとわからないことの方が多いとは思いますが
 絶対にCarinaに入社し、Carinaで最速のスタイリストになりたいと思っています」


「そっか、そりゃ期待できるね。
 はい、じゃぁ終わり」


「えっ終わりですか!?」


「うん、終わり。まだ言いたいことなんかある?」


「いえ、とんでもないです!
 ありがとうございました!」